○月×日 天気:曇り 今日は昨日の様々な土産を使い鍵開けの技を 磨こうと朝から考え動いた。 私が鍵開けの訓練を行っている最中、雪乃嬢は いつもの通りアリの巣の奥に巣食うDreadSpiderを 退治していたらしく、今日もまた謎の帽子を手に入れた らしい。……雪乃嬢もなかなか運がいいようだ。 例のごとくセキュアに入っているらしいので私も鍵開けが ひと段落したら覗きに行くことにしよう。 しかしやはりどこかで失敗したのか、心なしか雪乃嬢は 嬉しそうな表情を最後までしなかった。大丈夫だろうか… 鍵開けが終わりセキュアの中身──大層な幸運の お守りが付いたMagician's Hatだったが──を覗いた 後は弓の練習を行いにMoonglowの墓場へと足を運んだ。 どうやら鍵開けの練習が功を奏したらしく、ある程度の 弓なら引けるようになったようだ。雪乃嬢曰く、弓を使うのなら 墓場で練習するか動物や下級の魔物──リザードマンなど が相当するらしい──を狩ると良いとのこと。どちらもあまり 狩れるとは思わないが……ということでまずは墓場に行く ことにした。しかし敵が相当多く、柵に引っ掛けながら弓を 射るのが精一杯だった。しかも魔術を使う亡霊が居るので ただ引っ掛けるだけだと離脱しながらでないと私の腕では 到底保たない。やれやれ……暫くはこれが続くのか。 矢が尽きたところで弓の訓練は終了する。このようなやり方でも やはり少しは狙いが定まるようになったようだ。 これからも狙いがずれることの無いよう訓練をせねば。 夜戻ってきて一息ついていると、何やらAliceが慌しい様子で 色々な準備をし出て行った。何事かとAlyssumに尋ねると、 どうやら崩れ落ちそうな家があるらしくあわよくば新築しようとの 魂胆らしい。とは言うが……同じことを考えている人間が やはりいるであろうからあまり期待はできまい、と伝えると、 それでも腐った家からは前の家の持ち主の道具が巻かれるから それを確保する意味でも無駄にはならないよ、と笑顔で 返された。そういえば……少々知識を整理する。確か ブリタニアにも所有権が存在するものの例外が存在するとの 条項があった気がする。もしかするとこの場合がそうなの だろうか。と、Alyssumが何やらその条項であるらしい部分を 私に差し出してきた。どうやら”アカウント”というものが なくなった、或いは切れた──要するに住民権のようなもの らしい──場合、その住民の道具に所有権は存在しなく なるとのこと。確かにそうなると落ちた道具は拾っても 大丈夫だろう。Aliceは建築をもししくじっても道具を拾って くるつもりだったのか。道理で珍しくGiantBeetleなどに 乗ってたわけだ……と、Alyssumが今日はAliceが酒場に 来ないことを報せに行くと言って出て行った。今日は管理人と 雪乃嬢は寝てしまっている。流石に家を閉めて寝るわけには いかないので、どちらかが帰るまで読書をして時間を 潰すことにする。 Alyssumはすぐ帰ってきたが酔っ払ってしまったらしく 帰るなりすぐ潰れてしまった為結局私がこんな時間まで 待っておく羽目になってしまった。書物をあれから3冊ほど 読んだところでAliceが帰ってきて戦利品──どうやら 家は建てれなかったようだ──をセキュアの前で漁り始めた。 暫く無言だったが、4冊目を読み終わると同時Aliceが小さく 声を上げた。何事かと思い後ろを振り返ると、そこには 彼女の驚いた顔と手に持たれた漆黒のサンダルが 待ち構えていた。どうやらこれだけ他の戦利品と毛並みが 違うらしい。話を聞いてみると、その昔イルシェナー ──同じ世界に存在するブリタニアとは別の大陸らしい── の存在が知れ渡った頃、先行して探索をした冒険者たちに 配られたものらしい。今はそれなりに値が張るらしく、なんと 今回建てようとしていた土台の半額程度あるらしい。それは いい物を拾ったものだな、と呟くとAliceは頷き、今の靴を私に 寄越すと満足そうに履き心地を確かめていた。履いていた サンダルは私にくれるらしい。丁度私も別の靴が欲しかった ところなのでそれならありがたく頂戴するとしよう。 今宵眠るのは戦利品の片づけが終わってからになりそうだ。 |