○月×日 天気:晴れ

今日は作業場からこの手記を書いている。
少し離れた鍛冶場で管理人が作業をしている様が窺える。

今日は朝起きると2階のベンダーとAliceが何やら話をしていた。
どうやら品物を置き始めているらしい。どんなものが売られるのだろうか。
挨拶も兼ねてAliceに色々と尋ねてみると、どうやら

・転送粉と骨セキュア
・ワンド
・その他細々とした雑貨

を売りに出すようだ。実際売れるようになるのは当分先でしょうけど、と
苦笑するように彼女は言ったが、そのうちルーンを配るなどの宣伝を
行うと言っていたあたり、それなりに売りこむ腹積もりはあるようだ。
となると私もワンドをいつか補充しなければならないようになるだろう。
それまでに開錠の訓練も怠らないようにしなければなるまい。
ただ、このワンドがやはりネックになっているらしい。つまり、ワンドは
他の2つと比べてある程度高値になるため、ベンダーが管理するには
その値段に応じた給金を支払わなければならない。ベンダーは責任を
もって売れるまでその品物を管理するが、その責任に対して払う給金も
応じたものでないとベンダーは機嫌を損ねてしまうというわけだ。
とりあえず先払いである程度は払っているらしいが、いつまでも
売れなければ払い損になるのは目に見えている。そうなる前に
宣伝をしないといけない、と少々困った様子でAliceは話していた。
なるほど、ベンダーというのも一筋縄ではいかないようである。
またこれらの需要がどの程度なものかも未だに掴みきれていない
ようで、暫くはベンダーを巡って見極めてみるとのことだった。
確かに需要を見極めることは商売の基本である。しかし、
このまま彼女は商人になるつもりなのであろうか……?謎である。
この後も別のベンダーと打ち合わせがあるようなのでひとまず
Aliceとは別れ、弓を携え狩りに出かけることにした。

狩場のルーンを綴じたルーンブックを開きやってきた先は
魔術の町・ウィンドへの入り口の麓だ。ウィンドはこの山の奥に
入り口がある。その入り口は少々特殊な魔方陣が張ってあり、
ある程度の魔術の心得が無ければ中に入れないという場所なのだ。
今回私が狩場に選んだのはそこへ行く道とは逆の方面へ上った
場所──通称ソレンという蟻たちが闊歩する場所である。
最近EarthElementalでは面白みが無くなり、他に何処かないかと
雪乃嬢に尋ねるとこの場所を教えてくれた。彼女もここには暫く
剣術の訓練に訪れた場所のようで、infiltratorを倒していくと
丁度いいのではないかとのことだったので様子見も兼ねて一度
足を運ぶことにした。ウィンドの入り口は北東へ上る方角の
ようなので、北西へと上っていく。坂はさほどきつくは無く、
これくらいならば上から敵がやってきても難なく後退などもできよう。
と、先のほうから何やらけたたましい音と共に数匹の巨大蟻が
目の前に立ちはだかった。どうやらこの蟻たちがsolen infiltrator
のようである。早速弓を構え敵を討つが、今まで相手にしてきた
クリーチャーとは一味違い私の放った矢を悠々と腕の鎌で払う。
流石にまとめての相手が不利と判断し、1匹ずつ誘き寄せて撃破する
戦法をとった。敵を倒すと屍骸の中にキノコのようなものと宝石が
入っており、これらは持ち帰ったほうがいいと雪乃嬢から言われている
為に倒すごと私のバックパックに詰めていった。徐々に弓も相手に
当たるようになり、初めてデスパイスに弓を取って行ったような
感覚に陥る。あの頃も初めは中々当たらなかったが、じきに当たる
ようになっていったものだ。あの頃と比べると流石に上達したが、
まだまだこの者たちと戦い弓術を磨かねばなるまいと感じた。

矢が無くなったので家へと帰り、キノコと宝石をセキュアの中に入れ
作業場の休憩所で一息つくと管理人が作業場に入ってきた。
どうやら久々に集中して鍛冶の訓練をするらしい。以前からShortSpear
について研究をしてきたようだが、今回は東洋から渡ってきた
Shurikenというものの研究を実際に作成しながらやってみるという。
少々うるさいが我慢して欲しい旨を伝えられ、了解する。
こうして書いている現在も作業場では管理人が猫の姿──こちらが
本来の姿らしいが──でShurikenとやらを作っている。
うるさい、とはどうやら鉄を金床で叩く際に出る音のようで、
この程度なら手記を書けないほどではないだろう。Alyssumなどは
鉄の音というのがどうも苦手のようではあるが…… やはり
エルフは鉄のようなものには手が出せないのだろうか。
そうこうしているうちに管理人が作業の手を止め、こちらへやってきた。
研究は順調かと尋ねると大して大きくも無い身体を椅子の上で
精一杯張り、指を立ててきた。どうやら順調にいっているようだ。
聞けば、また1ランク上の加工方法もある程度掴めたらしい。
研究対象もShurikenからエルフが設える冠に変え、もう少しやってみる
とのこと。やけに頑張るようだが、実際はAliceに尻を叩かれている
らしい。管理人としても日向ぼっこを優先したいらしく少々不満気味
であったが…… まぁ彼女の性格だし仕方あるまい。

ひとしきり私に愚痴った後、管理人はそのまま作業台へと戻っていった。
私はこれから何をしようか…… 久しぶりに隠遁の練習をしつつ、
こちらのYewの景色を眺めてみることにしよう。
		
	
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