○月×日 天気:晴れ 風強し 引越し後の作業もひと段落し、またいつものように…とはいかないようだ。 やはりそれぞれで少しずつ辛い部分が出始めている。 まずはやはりAlyssumだろう。Yewでの生活に慣れていた所為か、 体調が芳しくないように思われる。また医学の心得を雪乃嬢しか 持っていないため、彼女が付きっ切りとはいかないまでも 比較的多い頻度で看病を行っている。Aliceと管理人は何時も通り ではあるが、やはりAlyssumの体調を少し気にかけてはいるようだ。 このままの状態が続くようであればあの方法を提案するしか ないのだろうか… 彼女が決めた道なのであまりとやかくは 言いたくないのだが。とりあえずAlyssumの命に別状はないとの ことなので私は暫く様子を見ることにする。急変すれば勿論 この限りではないが。 今日は久々に鍵開けの練習を行った。AliceがまたLockpickを 溜めていてくれたようで、結構な数になっていたためだ。 練習をしていて気づいたのだが、どうも古代モンスターの落とす 宝箱──俗に言うパラゴン箱──だが、どうも他のものとは 少し違うようだ。まず、人間が作ったものとは明らかに鍵穴の 構造が違う。複雑さがどうにも増しているように思われる。 またこれらには罠が仕掛けられており、魔術の心得がなかった 私には手の出しようがなかったためにAliceに頼んで魔術で 罠を解除してもらった。とはいえ流石にいつまでもAliceに やってもらうわけにもいかないし、ダンジョンまで着いてきて もらい解除、というのも申し訳ないので初歩の魔術は身に つけることにした。効果的な方法での魔術訓練法をAliceに 教えてもらったのでその方法を試してみると、数時間後には 4thランクの魔法まで唱えられるようになった。 鍵開けも一部のパラゴン箱の開錠に成功するなど、着々と 技術が向上しているのが解る。嬉しいことだ。この調子で 早くダンジョンの宝箱と相対したいものである。 夜、Aliceが酒場に──とりあえずAlyssumの看病を行った 後に、だが──行ったときのことの話を聞かせてもらった。 どうやら酒場に魔王軍一行が立ち寄ったとのことだった。 彼らは何やら敵を討伐すると出て行く途中だったらしい。 討伐後も酒場の一角を占拠して内輪話に華を咲かせていた ようだったが、相貌と会話の内容が少しずれていたらしく なかなか面白い連中だった、とのこと。魔王軍といえば 決まって怯えられる存在であるが… 面白い連中呼ばわり されるとはどのようなものなのだろうか。いつか私も お目にかかりたいものである。 今日は久しぶりに管理人が遅くまで起きている。 いったい何をしているのだろうか… まぁ私の知るところでは ないし、気にしても仕方がないので今日はこれで 眠ることにする。 |